ラブドールと人類の関係。

ラブドールと人類の関係

もともと異質な存在として捉えられていたこの人物や感情だが、社会恐怖症や障害によって人との関係構築が困難なために、自分の感情を「人形」に移し替える人が増えている。セックスドールとの暮らしは、決してひねくれた行為ではありません。女性がより支配的になるにつれ、セックスドールは男性に、自分が支配するような関係に戻る機会を提供するのです。” アメリカのメディアタレント、ジュリー・ベック氏は言う。

神話に登場するピグマリオンは、彫刻家（＝ピグマリオン王）が天上の美女を彫刻して恋に落ち、彫刻家はその恋が現実になるように昼夜祈り続けるという物語である。結局、願いは叶い、彼は愛する「女」と結婚することになる。この物語は、8世紀に書かれたオヴィッドの詩「変身」を基にしており、その後何度も翻案されている。ピノキオ（童話）、フランケンシュタイン（SF小説）、マイ・フェア・レディ（オードリー・ヘップバーン主演のキャバレー映画）、90年代の映画「突然、君に恋してる／マイ・フェア・レディ」も、上記の神話をルーツとしている。

現代では、ピグマリオンには「後継者」であるデイヴィッド・キャット（スクリーンネーム）がいて、アメリカのミシガン州南西部に3体の高級セックスドールと一緒に住んでいる。最初に買ったセックスドールには妻のシドーア・クロネコと名付け、残りの2体、エレナとミュリエルはただの恋人だった。 David Catは自分で作ったのではなく、創造主なのです。工場で作られる前にデービッドキャットがデザインし、家に戻ってからデービッドキャットが魂と個性を与えるのです。昨年の対談で、”シドーアや他の人形は、私にとって決して一つのものではない “と話していました。

David Catはセックスドールコミュニティーでは有名な人物で、活発なブログや記事、特集ドキュメンタリー、TVスポットに多数出演していますが、彼はiDollatorsのコミュニティの縮図に過ぎません。iDollatorsのコミュニティには、セックス、愛、芸術、仲間といった異なる意味を持つ高級人型ドールのコレクターが大勢います。 -セックス、ラブ、アート、コンパニオン。

もしピグマリオンが現代に生きていたら、それらは彼にとってあまりにも異質なものだっただろう。ロイヤル・カレッジ・オブ・アート人文科学部の博士課程研究主任であるマーコード・スミス博士は、その著作『エロティック・ドールズ』の中で、オヴィッドの物語には、彫刻家が像を本物の人間にする前に精神的な関係を持っただけでなく、性的な関係も持ったことを示唆するいくつかのテキストがあると書いている。このような「彫刻の愛」の伝説は、古典派時代にも見られる。例えば、ギリシャの弁論家アテナイオスは、キューピッド像と肉欲的な恋愛をした男について書いている。最近の例では、1877年にある庭師が彫刻「腕の折れたヴィーナス」のレプリカと愛を交わそうとしたことがある。

ラブドールの消費市場は成人男性向けだが、バービーの着想の源となった。

歴史上、美しい彫像を「手に入れる」ことができなかった男たちは、内なる欲望を満たすために様々な手段に訴え、それは女性の模造品とセックスする傾向にも表れている。船乗りは布で性人形を作ることが多く、フランス語ではdame de voyage（旅の女）、スペイン語ではdama de viaje（旅の女）と呼ばれていた。現在、日本ではセックスドールのことを「ダッチダム」と呼ぶことがある。というのも、手縫いの革製オナニー人形は、17世紀にオランダの船員によって発明され、日本に持ち込まれたと文献に記載されているからだ。

船員たちのセックスドールは、誰でもいいという女性への欲求の代用品であり、特定の女性の代用品として特別にドールを作る男性もいた。愛に向き合う勇気も自信もなくなったというアルマ・マーラー（古今東西の人形コレクターがよく言うこと）。

しかし、コクシカはミュラーを心から愛していた。だからこそ、仕立屋にマーラーと同じ人形を作るように細かく指示を出したのだ。コクシカは、人形の形だけでなく、肌触りまで細かく指示した。コクシカがミュラー人形を受け取ったという史実については、歴史家の間でも意見が分かれるところだ。ミュラー人形はふわふわの手触りで、人間というより高級なぬいぐるみのような感じだったという点では、誰もが認めるところです。コクシカはミュラー人形に執着していたという説もあれば、コクシカは受け取ったミュラー人形を非常に残念に思っていたという説もある。

コクシカは「彼女」の絵を何枚も描き、ある資料によると、コクシカが庭にあったミュラー人形を破壊することになったのは、あるパーティーの席でのことだったという。人形は燃やされるか、埋められるかのどちらかでした。

しかし、シュルレアリストのマン・レイやサルバドール・ダリによるマネキンアートが、セックスドールの近代的な時代の幕開けとなったのである。様々なアーティストのマネキン16体が展示された中で、ダリの「雨の日のタクシー」は、半裸の女性がカタツムリを這わせている作品です。マン・レイは、シュルレアリスムとは、作品の中にヌード・ポルノを一度に輸入することではなく、マネキンを通してその本質を見抜くことであると述べています。

第二次世界大戦中、アドルフ・ヒトラーが親衛隊の司令官に命じて、ドイツ兵がアーリア人以外の女性とセックスするのを防ぐために、性的欲求を緩和するためのセックスドールをデザインさせたという噂がある。これが事実かどうかは別として、セックスドールの商業的な開発はドイツで始まり、1950年代にドイツの会社が「リリードール」という、セクシーで率直な漫画のキャラクター「リリー」をモチーフにした11.5インチ（約30cm）のプラスチック製の人形を作り、今日の機能性セックスドールではなく、著者が The History of the Sex Doll』の著者であるAnthony Ferguson氏は、この作品を「エロティックなパロディ」と呼んだ。リリー人形は成人男性向けに販売されたが、バービー人形の着想の源となった。

アメリカでポルノの郵送販売が合法化された1968年頃からアダルト雑誌にセックスドールの広告が掲載され始め、1980年代にはほとんどのアダルトショップで購入することができるようになった。しかし、当時のセックスドールはまだ膨張式人形であり、セックスというより、学生時代のパーティでの悪戯なプレゼントに適していたのである。ファーガソンは著書の中で、「（セックスドール製作において）人々は主に入口部分、口、膣、肛門に技術的な取り組みを集中させた」と書いている。膨張式人形は、縫い目が壊れるまで、一定の体重と繰り返し回数にしか耐えられないのです。

1990年代後半、フェスティバルのマット・マクマレン氏は、高忠実度の女性用シリコン製セックスドールを開発し、その成果をウェブサイトで公表することで、セックスドールの実用性能を飛躍的に向上させた。やがて、「あの人形は……人間と同じ体格なのか」という問い合わせがメールで届くようになった。当時は、セックスドールはそういうものではなかったんです。しかし、あまりの需要の多さに、マクマレン氏はこの人形を提供するようになったのである。その後、ハイレプリカのセックスドールが誕生しました。ハワード・スターンがセックスドールを所有し、ラジオ番組で「愛し合った」ことから、マクマレン社の名声と人気が高まり、今では200〜300体の高級カスタムセックスドールを販売しています。の人形です。

McMullen氏の会社では、主に女性のセックスドールを作っているが、少数ながら男性のドールも作っている。しかし、後者を買う人は少なく、需要のあるお客様は10％に過ぎない。マクマレン氏は、「アーティストでありながら、女性の姿に惹かれる。それが私の主題であり、ミューズなのです。模倣は最も誠実な賛辞の形です。この人形が本物の女性に取って代わることを望んでいるのだろうか？もちろん、そんなことはありません。

歴史的に、生殖以外の性行為は不適切とされてきました。

ピグマリオンと大理石の花嫁、オスカー・コクシカと毛皮の仲間など、歴史を振り返ると、これらのセックスドールの製作者や使用者は、当然のことながら、異性愛者やストレートの男性ばかりでした。ポルノ作品のデータベース「ブックギャラリー」の副社長であるシンシア・アン・モヤは、「19世紀後半から1980年代にかけて、ロサンゼルスの人間性高等研究所における人工ヴァギナとセックス人形の研究」を博士論文としました。 “内容分析に使用した雑誌や書籍では、これらの事例の使用者に女性が含まれていないことがわかりました。しかし、それは女性が性具を使わなかったということではなく、ただ、広まっていた神話の中では、「セックスドール」を使うのは常に男性であったということです。

これは、なぜもっと多くの女性がセックスドールを使わないのか？という2つの問いを提起しています。 “

なぜ多くの男性が彼らに魅了されるのか？

真価を発揮する答えがある。例えば、膣内性交でしかオーガズムを得られない女性は25％しかおらず、セックスドールの効果に大きなディスカウントを与えています。また、セックスドールの話題になると、みんな体重のことを「話す」のですが（女性のセックスドールは75～115ポンド。 (約34～52kg）。少し恥ずかしそうに話す女性もいれば、おおらかな女性もいましたが、全員一致で「人形は運動するには少し重い」と話していました。

男女のオナニーの仕方の違いについては、さまざまな憶測が飛び交っています。ヘンリー・ハフロック・ヒエロファントが1936年に発表した『性の心理学研究』には、男性はセックスにおいて視覚を重視し、女性は想像を好むこと、女性は快楽を得るために触覚に頼ることが多いことなどが書かれている。 SmithとMcMullenは、個人差を考慮した上で、この伝統的な見解を再掲し、セックスドールやポルノ雑誌の多くが男性の「関心」で構成されている理由を、一見論理的に説明しているように見える。多くの女性はリアルな触感を第一に考えています。しかし、男性はリアルに見えるもの、心に喜びを与えてくれるものが好きなのです。現代のセックスドールは（非常にリアルな）シリコン製の肌を持ち、まるで生きているかのように見えるため、男性は「また一緒にセックスしたい」という衝動に駆られやすくなっているのです。

女性用セックスドールを購入する女性は割合多い。 McMullen氏はこのように説明します。これらの多くは、別の男性用ドールも（同時に）購入します。彼らは、ドールを着せ替え用のファッションドールとして利用するだけです。”多くの女性がこれらを等身大バービーとして扱い、とても大切にしています”。

カリフォルニア出身のバーバラは、61歳の中小企業経営者で、iDollatorsの中では数少ない女性の一人である。バーバラさんは、あるニュースで人形のことを知ったそうです。「（本物の人間を装った）人形を使って、相乗りレーンに割り込むように詐欺を働く人がいる」というのです。その後、TLC: The Learing Channelの番組「My Alternative Fetish」を通じてデヴィッド・キャットと出会い、バーバラは彼がとても歓迎される人物であることを知りました。バーバラさんによると、iDollatorsのサークルは男性が多いが、女性も歓迎しているそうだ。

バーバラと彼女の夫は4体のセックスドールを所有していますが、彼女は写真撮影にのみ使用していると話しています。しかし、（彼女曰く）本来の目的は何なのか、全く分からないという。

バーバラは私とのやりとりで、「フェミニストはセックスドールに恐怖を感じているようですが、私自身フェミニストなのでとても不可解です（でも私は結構好きです）」と語っています。彼らは、セックスドールが女性を「修飾」していると考えています。つまり、セックスドールは現実の人間よりも美しく、女性は外見上まったく比類がないと考えているのです。

しかし、ほとんどのフェミニストはこの主張に異議を唱えず、（いつか）セックスドールと美しさを競う必要があるのではと恐れていた。女性たちは、（セックスドールは）男性が女性をモノとして客観視することだと訴えています。これは女性の感情や思考を無視したもので、男性は女性を自分勝手な欲望を満たすための道具としてしか見ていないのです。セックスドールはモノである。しかし、厳密に言えば、その人の私的な所有物である。多くの場合、これらのオブジェクトは女性のような形をしています。

モヤの哲学の博士論文では、セックスドールを所有することがなぜ特異で退廃的なことなのかを問うている。彼女が言うように、”高品質なバイブレーターは、人間疎外についての長い独白を構成するわけでもなく、私たちの生活の技術的機械化に対して具現化した効果を持つわけでもない “のです。セックスは飢えとは違いますが、私たちはさまざまな「食べ物」（セックスドールなど）でその食欲を満たしています。もしセックスドールの所有者が他人に危害を加えないのであれば、なぜ彼らを責めなければならないのでしょうか？実は、オナニーの特殊な形態なのです。

バイブレーターなどの性具が主流になりつつある現在でも、セックスドールには少し謎が残っています。なぜなら、セックスドールはある程度、ジェンダーや権力の領域のトピックを、バイブレーターや、バイブレーターにはない方法で扱っているからです。

歴史的には、生殖を伴わない性行為はすべて不適切と見なされてきたとスミスは言う。しかし、現在では、これに対する人々の要求は緩和されています。情緒的な愛着は社会的に生産されたものではなく、だからこそ人は人生から満足を得ることが難しい。だからこそ、ごく一部の男性はセックスドールを単にセックスのために使うのではなく、人間的な関係も持ちたいと考えているのだ。セックスドールと合意の上で互恵的な関係を築くことは男性には不可能であり、結局はシーソーに過ぎない、男性の判断による関係なのです。

しかし、これらのリアルなセックスドールは、常に男性を刺激し、純粋な愛情を感じさせ、そのために自分の体を維持することさえあるのです。セックスドールに個性や嗜好を与え、まるで本物のパートナーのように話す男性もいます。スミスの本には、「これは共感の一形態で、ドイツ人がEinfühlungと呼ぶ現象で、（あるものに対する）愛情を他のものに移すことを意味する」と書かれている。

言い換えれば、自分で作ったものをすべて好きになるのは、自己陶酔であり、ナルシシズムの一種である。スミスは、”これでオナニーの話も説明できる。”これらのことには関連があるのです。

ナルシシズムであろうとなかろうと、セックスドールに愛着を持つと、人はひきこもりになってしまいます。スミスは、現代のテクノロジー時代において、人がモノと恋愛関係になることはもはや珍しいことではないと指摘する。「あなたとAppleフォンを考えてみてください。あなたがその人を抱き、なで、一緒に寝転がるのです。彼/彼女はあなたの延長です。” しかし、対象がヒューマノイドであり、恋愛関係に性生理が絡むとなると話は別です。非生物の形をした物体と感情的、肉体的な関係を持つ男性にとって、セックス・ドールとの生活は心理的、社会的に影響を与える可能性があります。私は彼らを患者として扱っているわけではありませんが、このように感情を客観視することで、人の感情的知性を縛ることには、確かに危険性があります。

サラ・バルベルデは研究者であり、精神衛生の専門家でもあります。修士論文では、心理学の観点からセックスドール所有者の人口統計学的および心理学的特徴を調査しました。サラによると、調査中、回答者の多くがセックスドールを所有することに羞恥心や恥ずかしさを示したという。しかし、ステレオタイプに反して、このグループは一般の人々と同じように人生に満足しており、うつ病やその他の精神疾患に高い確率で罹患していなかったのです。普通の人にとって、セックスドールと暮らすというのは、確かに普通の性行動とは言えない。ただ、サラは “その人の生活がセックスドールだけで回っていて、他のことに影響を与えない限り、その相手を（精神）障害の症状があると定義することはできない “と言っているんです。

セックスドールを買う人には、紛れもない理由があり、その中には同情できるものもあります。単に面白いと思う人もいれば、社会恐怖症や障がいのために人との関係を築くのが難しい人、写真を撮るためだけに利用する人もいます。意外とセックスドールという現象は定義しにくいものです。

この多岐に渡る会話の最後に、私はスミスにこの話を一言でまとめてほしいと思った。するとスミスは「引用にする？わかった、やってみるよ。セックスドールはナルシシズムと共に歩み、ファンタジーと付き合う。それは創造的な空想の逃避であり、人や物に対する思索である。親密さという行為に挑戦しており、それが論争の核心となる。”

セクシュアリティに関する問題は、不可避的にジェンダー関係に帰結する。しかし、この現象は、男女関係の歪んだ側面に光を当て、私たちが直視したくない事実を浮き彫りにする、ハハ鏡のような役割を担っているのです。その人たちが、この女性らしからぬものを何に変えるにせよ、結局は社会の様々な意識を表しているのです。ほとんどの男性は女性に恋をしますが、一部のノンケは人形に恋をします。

昨年、こうした考えについてDavid Catに話を聞いたところ、「私の知る限り、iDollators界やテクノセクシャル界では、98％がドールを女神としている」と怒っていた。確かに女嫌いで独身という男性も多いのですが、女性の結婚相手としての基準に満たないために独身という人もたくさんいます。セックスドールには人間のそういった煩わしい性質はありません。”彼女はあなたに嘘をついたり、裏切ったり、批判したり、あなたを不愉快にさせるようなことは決してしません”。

セックスドールのパートナーはしばしば、女性の心は予測不可能であるがドールの心は変わらない、女性はあなたを裏切るかもしれないがドールは忠実である、女性はあなたの他に恋に落ちるがドールはただ人としてあなたを求める、と後悔しています。女性は人間であり、人形はそうではありません。

1995年、大人気の男性用オナホール「Fleshlight」の発明者が、「性的使用のための女性モデル」の特許を申請した。（スミスの本には、発明者の言葉として、「女性は薄情で、金にがめつく、浅はかで、自分を恥ずかしいと思うから発明されたのだ」とあります。男を辱め、心を揉みしだく。セックスドールは正反対で、心に価値があり、従順で親しみやすく、愛すべき存在なのです。” 米メディア・パーソナリティ

バルベルデの研究によると、セックスドールは、現実的な現実の関係を見つけられない、あるいは持ちたくない男性に、感情的な安らぎと肉体的なはけ口を与えてくれるそうです。しかし、歴史をさかのぼると、女性や同性愛者が拒絶感や孤独感を感じていたことは間違いないでしょう。

バルベルデは、男性が「女性は冷酷だ」という理由でセックスドールに惹かれることについて、彼なりの説明をしている。「かつてマーガレット・アトウッドは、『男性は女性に笑われることを恐れ、女性は男性に殺されることを恐れている』と言いました。女性は男性に殺されることを恐れているのです』。本当だと思います。”

セックスドールとの暮らしは、決してひねくれた行為ではありません。女性がより支配的になるにつれ、セックスドールは男性に、自分が支配するような関係に戻る機会を提供します。セックスドールは男性に安らぎを与え、貞淑にし、孤独を払拭させる。セックスドールは男性を変えようとはしないし、ましてや男性が馬鹿馬鹿しくて不条理だと思うようなことをすることもない。

Erodoru (@JulieRo88194790) | Twitter